春になると気温の上昇とともに、猫の活動も活発になります。
また、この時期に見られる病気もあるため、猫が元気で長く暮らすためには、色々と注意してあげたいことがあります。
今回は春から夏の季節に気をつけてあげたい猫の病気や健康管理についてお伝えします。
記事監修
獣医師 西村 美知子 ブルーミントン動物病院院長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業後、東京都武蔵野市吉祥寺で開業、2009年に現在の 東京の西荻窪に移転。 自然療法中心の病院です。検査から治療まで、精神的にも身体的にもストレスをできるだけかけずに動物さん個々が本来持つ「治癒力」が動き出すよう、様々な 自然療法をご提供しています。
目次
猫にもあるの?花粉症やアレルギーについて
猫も人間と同じように、アレルギーが比較的多くみられる動物です。
猫の中には明らかに春になると目の周りやお腹周辺を痒がるようになるケース、あるいは年中見られるアレルギー症状が、特に春に症状が悪化するケースがあり、春の季節はアレルギーを持つ猫は注意が必要です。
季節的なアレルギーでは、目の周りや耳を掻いたり、お腹や手足をよく舐めるような仕草が多く見られます。
そのため、目や耳の周りが傷ついていたり、あるいは目や耳、お腹や手足などの症状が見られる部位の毛が薄くなっていたり、ポツポツの皮膚に湿疹が見られるようになります。
アレルギー対策
猫にとってアレルギー症状は辛いもののため、まずは抗ヒスタミン剤やステロイドなどで痒みを短期間おさえてあげることが大事です。
とは言っても、これらの治療はあくまで対症療法であり、アレルギーを治しているわけではありません。
残念ながら、アレルギーは完治できないことが多い病気ですので、一般的には一生の治療が必要です。
お薬はもちろん、アレルゲンになりにくい原材料で作られたキャットフードやサプリメントを取り入れることで、アレルギー症状を軽減させたり、抗ヒスタミン剤、ステロイド等のお薬の使用量を減らすこともできますので、かかりつけの獣医師に相談しながら、その猫にとって一番良い方法を選択していただければと思います。
また、猫のアレルギーによる皮膚炎は、ノミのアレルギーが関係していることが多く、アレルギーと付き合う中で、ノミの予防は必須ですので、必ず実施してあげるようにしましょう。
春は外がとにかく危険!猫の外出に注意!
近年、猫の完全室内飼育が多くなり、外に出ないで暮らす猫も多くなりました。
しかし、現実にはまだまだ外に出る猫が多いのも事実です。
春になって暖かくなると、外に出る猫にとっては、いろんなアクシデントが起こる可能性がありますので注意が必要です。
可能であれば、室内で十分な運動ができるような環境を整えて、おうちの中で暮らせるようにしてあげてください。
外に出る猫にとって注意したい病気や事故など
注意したい病気一覧
マダニ感染
暖かくなると、マダニの活動が活発になり、外に出る猫では、寄生される可能性が非常に高くなります。
マダニに咬まれると皮膚炎を起こすだけではありません。以下の様な症状も発症します。
・猫ヘモプラズマ感染症
・ライム症
・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
という病気にかかることもあります。さらには人間にも感染する病気を持つこともあるため注意が必要です。
もし、ご自身が咬まれた場合、数週間は体調の変化に注意して、発熱等の症状が現れた場合は医療機関を受診してください。
ノミ感染
ノミは13℃以上の環境であれば生きていけますので、冬でも猫の体に寄生して過ごしています。
春になると、外で暮らす野良猫の活動も活発になりますので、外に出る猫が野良猫と接触する機会も増え、容易にノミに感染してしまいます。
アレルギーを持つ猫では、ノミに対するアレルギーを持つことが多いため、痒がるだけでなく、腰からお尻にかけて皮膚炎を起こすようになります。
また、ノミに刺されることで猫ヘモプラズマ感染症のリスクが高くなり、感染すると赤血球の異常から貧血が起こります。
さらに、猫が自身の毛づくろいによってノミを口にすると、瓜実条虫(サナダムシ)という寄生虫に感染する可能性もあり、下痢や嘔吐を引き起こします。
もう一つ厄介なのは、マダニと同じように、ノミは人間にも感染する病気を媒介することもあるため、やはりしっかりと予防する必要があります。
猫ノミは人に寄生することはありませんが、吸血することがあり、刺されると激しい痒みに襲われ、ひどくなると水ぶくれになるケースもあるので注意が必要です。
また、頸部のリンパ節に痛み・腫れが出るほか、発熱するケースもあり、重篤な場合、麻痺や脊髄障害になる場合もあることもあります。
マダニ感染とノミ感染の予防策については、結構いろいろあるのでもう少し調べてから別のコラムで詳細をご紹介したいと思います。
フィラリア症
フィラリア症と言えば、多くの方が犬の病気だと思われるようですが、実は猫でも見られる病気です。
蚊を媒介とする寄生虫の病気で、最終的に心臓内に到達し成虫になってしまいます。
フィラリアのやっかいなところは心臓内で大きくなった成虫のフィラリアを殺しても、その死体は心臓内や血管に詰まってしまい、血行障害や異物反応を起こす可能性があるところです。
しかも猫のフィラリア症は、少数のフィラリア成虫の寄生で、嘔吐、咳、呼吸困難など重度な症状を引き起こすため、非常に厄介な病気です。
猫のフィラリア症は診断が難しく、猫が亡くなってから感染がわかるケースが多く見られます。
猫のフィラリア症は、犬と同じようにフィラリア幼虫を持つ蚊に刺されることで感染するため、多くの地域では蚊が発生する春以降、感染リスクが高くなります。
今のところ、犬ほど感染率は高くないようですが、全国で見られるため、予防はしっかりと行ってあげてください。
猫のフィラリア症の予防策
・予防薬の使用
予防には、現在ノミ予防が同時に可能なスポットタイプ(背中に垂らす)がありますので、月に1回の使用をした方がいいでしょう。
ウイルス感染
外で暮らす野良猫はノミだけでなく、様々なウィルスを持っていることが多く、猫免疫不全ウィルス(猫エイズウィルス)や猫伝染性鼻気管炎ウィルス、猫カリシウィリスなどが問題になります。
これらはワクチンで予防することもできますが、完全な予防は難しく、しっかりとワクチンを受けていても、感染することがあるため、注意が必要です。
伝染性鼻気管炎ウィルス、猫カリシウィルスは、感染すると数日の潜伏期間のあと、主に目の結膜炎や鼻炎、口内炎といった症状が見られるようになります。
その一方で猫エイズウィルスは一時的な発熱などはあっても、そのあとしばらくは何の症状も示さず、感染に気づかないことも多くあります。そのため、外に出る猫は、ワクチン接種はもちろん、定期的に猫エイズウィルスの検査を受けるようにしましょう。
ケンカ
ケンカもやはり野良猫が活動的になる春先に多くみられます。
猫は、なわばり意識の強い動物ですので、普段はお家で過ごす猫が外に出ると、野良猫のなわばりを荒らすことになり、ケンカのきっかけになってしまいます。
ケンカでは咬み傷や引っ掻き傷によるケガはもちろん、野良猫が猫エイズウイルスを持っている場合は、猫エイズに感染してしまうリスクも高くなります。
また、ケンカでできた傷は、数日してから化膿して腫れ上がり、重症化することもあるため、少しでもケンカの形跡がある場合には、積極的に治療することをお勧めします。
交通事故
外に出る猫で最も危険なものが交通事故です。特に自動車による交通事故では死亡する確率もかなり高く、絶対に避けたいところです。
やはり春になって活動的になると、交通事故にあうリスクも高くなります。
交通事故に関しては、確実な予防方法は一つ、完全室内飼育だけです。厄介な交通事故を防ぐためにも、できる限り猫は室内で暮らせるようにしてあげましょう。
妊娠
妊娠はもちろん病気ではありません。
猫の場合、望まない妊娠および出産は人間社会にとって大きな問題となります。
不妊手術を受けていない猫が外に出ると、交配する可能性が非常に高く、さらには雌犬のように年に2回の発情ではなく、雌猫の発情は数週間〜数ヶ月ごと周期に見られるため、それだけ交配する機会も増えることになります。
そのため、猫が活動的になる春以降は、望まない交配を避けるためにも、外に出さないようにしてあげてください。
また、どうしても外に出てしまう場合は、不妊手術をお勧めします。
まとめ
春になると人間と同じようにアレルギーを持つ猫の症状が悪化することがあります。
さらには多くの猫は活動的になり、外に出ることで様々な病気や事故にあうリスクが高くなってしまいます。
これらの危険を少しでも減らすために、予防接種(混合ワクチン)、ノミとマダニの予防、フィラリア予防を確実に行い、さらには完全室内飼育ができるように、お家の環境を整えたり、良質な食事やサプリメントを使って免疫力を高め、病気にかかにくい身体作りをしてあげることがとても大切です。
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論文掲載の欧米医療ジャーナル
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そして、アレルギー性の皮膚炎について、可能な限り化学薬品を使わず食生活の面から獣医師がアドバイスして根本から対処したり、ウィルス感染に負けない免疫力の向上を日頃から提唱している病院があります。
以前に対談で登場いただいたブルーミントン動物病院では西洋医学と東洋医学を融合させた新しい動物治療のあり方を探求されています。
西村先生にアレルギー性皮膚炎、ウィルス感染症の対処法を伺っていますので、また、別なコラムでご紹介したいと思います。
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