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犬の免疫力を高めるには?
よく『病気に強くなるには免疫力を上げた方がいい!』とか聞きますよね。
では『免疫力』とは何でしょうか?
そこで、今回は免疫はどこでつくられて、どの様な働きをするのかまとめてみました。
記事監修
獣医師 西村 美知子 ブルーミントン動物病院院長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業後、東京都武蔵野市吉祥寺で開業、2009年に現在の 東京の西荻窪に移転。 自然療法中心の病院です。検査から治療まで、精神的にも身体的にもストレスをできるだけかけずに動物さん個々が本来持つ「治癒力」が動き出すよう、様々な 自然療法をご提供しています。
免疫力とは
免疫力とはどの動物にも備わっているものであり、病原体などから私たち動物の体を守っています。
細菌やウィルスが侵入しそうになったときには、傷口から体内に入れないようにします。
もし、体内に入ってしまった場合でも、体内の免疫細胞が病原体を攻撃して退治してくれます。
また、免疫細胞は体の中に発生した異常な細胞にも攻撃をしてくれます。
体の中に発生した異常な細胞は、放っておくと大きくなったり増えたりするので、免疫細胞はそれを攻撃しやっつけてくれます。
免疫力が高ければ病原体や異常な細胞も迅速に処理されますが、免疫力が低いと、この攻撃する力も弱まって病気にかかりやすくなってしまいます。
そして、免疫力がさらに低下してしまうと、危険な病気にかかるリスクも高くなります。
例えば、癌や自己免疫疾患、甲状腺機能低下など。
ただ、免疫というのは非常に複雑なシステムですので、現在のところ、確実に免疫力を高める、つまり感染症や癌を予防できる方法というのは確立されていません。
もちろん、感染症の中には『ワクチン』によって予防できるものもありますが、まだまだごく一部の感染症しか効果がありません。
インフルエンザワクチンのように効果が絶対的ではなく不確実なものもあるのが現状です。
しかしそのような中でも、免疫力を高める効果が期待できる方法もあります。
まず、免疫力を高める免疫細胞とはどんなものか以下を参考にしてみてくださいね。
免疫細胞の種類と働き
血液
免疫細胞は、私たちの体を循環する血液中やリンパ液中に存在しています。
人間の体には5リットルから6リットル程度の血液があり、心臓から送り出される血液は20秒から30秒ほどで再び心臓へと戻ってきます。
血液には体中へ酸素を運んだり、ウィルスや細菌、癌細胞などを攻撃したり、傷を治したり、体中の組織へホルモンや薬などの物質を運搬する役目を担っています。
血液は細胞成分と血漿(けっしょう)成分からできており、ほとんどが血漿(水分)です。
血漿には塩類(電解質)や様々なたんぱく質(アルブミンなど)が溶けています。
その中でも、主にアルブミンというたんぱく質は血液の液体成分が血管から組織に漏れ出るのを防いだり、ホルモンや薬などの物質に結合して運搬する働きをします。
赤血球
細胞成分の96%を占める赤血球は、体中へ酸素を運ぶ役割をします。
赤血球は成熟する最終段階で細胞内器官のほとんどを遺棄し細胞核を持たない細胞です。その為、赤血球の内部はヘモグロビンという赤いタンパク質で満たされています。
血小板
細胞成分の1%が血小板です。
血小板は凝固作用に関わっており、血の塊(血栓)を作って血管に出来た傷を修復する役割を持っています。
白血球
細胞成分、残りの3%が白血球と呼ばれる赤血球や血小板以外の細胞群となります。この白血球が免疫細胞と呼ばれる細胞です。
白血球は、からだの中に侵入してきたウィルスや細菌などから、常に命を守り続ける免疫細胞です。
からだの中では多種多彩な免疫細胞群(白血球の仲間達)が、緻密な連携を組んで異物と闘っています。
白血球には単球、好中球、好酸球、好塩基球、T細胞、B細胞、NK細胞があります。
★好中球・好酸球・好塩基球・・・顆粒球として白血球の60%を占めます。
★T細胞・B細胞・NK細胞・・・リンパ球として呼ばれ30%を占めます。
★残りの10%が単球です。
顆粒球
顆粒球は白血球の成分で、細胞のなかに殺菌作用のある成分を含んだ「顆粒」を持っています。
顆粒球は細菌やウイルスに対して直接攻撃を仕掛けます。
自分の細胞内に細菌などを取込んで、たんぱく質を破壊する酵素で細菌を破壊し消化します。
樹状細胞
外気に触れる鼻腔、肺、胃、腸管、皮膚などに存在している細胞です。
名前のとおり枝のような突起(樹状突起)を周囲に伸ばす形態が特徴です。
樹状細胞は、異物を自分の中に取り込み、その異物の特徴(抗原)を他の免疫細胞に伝える働きを持ちます。
実際には、抗原を取り込んだ樹状細胞は、リンパ節などのリンパ器官へ移動し、T細胞やB細胞などに抗原情報を伝えることで、それら免疫細胞を活性化させます。
活性化されたT細胞やB細胞が、異物を攻撃します。
マクロファージ
マクロファージは、アメーバ状の細胞です。
からだの中に侵入してきた異物を発見すると、自分の中にそれを取込んで消化(貪食処理:どんしょくしょり)します。
また一部のマクロファージは、異物の特徴 (抗原)を細胞表面に出すことで、外敵の存在を他の免疫細胞に伝えます。
そのほか、他の免疫細胞と共同で、TNF-α、インターロイキン、インターフェロンなど免疫細胞を活性化させるサイトカインという物質産生にも関与します。
リンパ球
リンパ球は、大きく3種類あります。
1.B細胞
2.T細胞
3.NK細胞
これらのリンパ球は血液中以外にもリンパ節などに多く存在することからリンパ球と言われるようになりました。
1.T細胞
ウィルスなどに感染した細胞を見つけて排除します。
T細胞は、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、制御性T細胞(レギュラトリーT細胞)の3種類があり、それぞれ司令塔、殺し屋、ストッパー・クローザーの役割があります。
◆ヘルパーT細胞:司令塔
樹状細胞やマクロファージから異物の情報を(抗原)受け取り、サイトカインなどの免疫活性化物質などを産生して、攻撃の戦略をたてて指令を出します。
◆キラーT細胞:殺し屋
樹状細胞から抗原情報を受け取り、ウイルスに感染した細胞や癌細胞にとりつき排除する、という「殺し屋」働きを持っています。
◆制御性T細胞:ストッパー、クローザー
キラーT細胞などが、正常細胞にも過剰な攻撃をしないように、キラーT細胞の働きを制御したり、免疫反応を終了に導いたり、というストッパー、クローザーの働きを持っています。
2.B細胞
B細胞は、抗体を産生する免疫細胞です。
血液のもととなる細胞(造血幹細胞)から作られ、樹状細胞の指令を受けると、外敵や異物だけを攻撃する抗体をつくり、異物の排除を手助けします。
またB細胞は、細胞ごとに作る抗体の種類が決まっており、B細胞が作り出せる抗体に見合った外敵が出現した場合にのみ、活性化し抗体と作り出します。
3.NK細胞
常にからだの中をパトロールしており、ウィルスに感染した細胞などを発見すると単独で攻撃をしかけます。
T細胞とは異なり、他からの指示を必要とせず、一人で外敵や異物を攻撃できるため、「生まれつき(natural)の殺し屋(killer)」という名前が付けられています。
免疫力をアップさせる方法
では、どんな方法で免疫力をアップさせることが出来るのか、見ていきたいと思います。
ストレスを溜めない
免疫力を高めるのに最も大切なのが「ストレスを溜めない」ことだと言われています。
人間の場合は、人間関係の悩みや睡眠不足といった不規則な生活を改善させることが有効ですが、犬の場合は、それぞれの犬の性質や飼育環境によって臨機応変に対応することが重要になります。
一般的には、お家の中でも安心して過ごせるスペースの確保、規則的な生活(食事の時間や散歩の時間を一定にする)、家族との十分なスキンシップ、人間生活に適応するためのトレーニングが有効と考えられています。
心の健康は体の健康にもつながっています。
適度な運動
適度な運動は免疫細胞を活発化させると考えられていますので、必要な運動量を確保することで免疫力をアップさせることができます。
しかし、人間の研究では過度な運動は逆に免疫力を低下させることがわかっていますので、あくまで“適度”に行うことが重要です。
とはいうものの、残念ながら犬にとっての“適度な運動”の基準はありません。
犬種や年齢、これまでの散歩量、肥満の程度、病気の有無などによって、一頭一頭で設定されるべきものですので、是非かかりつけの動物病院やドッグトレーナーさんと相談しながら調節してあげることをお勧めします。
人間の場合も同じですが、しっかりと運動して足腰を鍛え、肥満にならないようにすることができます。
肥満は様々な病気の原因にもなります。それで、免疫力を高めるのに運動は欠かせないということができます。
ただし、年を取って弱っていたり、運動が嫌いで外に出たがらない場合は無理に運動させようとするのではなくマッサージをしてあげるといいでしょう。
5分から15分くらいの肉球マッサージで、保湿と血行を良くして免疫力をアップさせることができますよ。
日光浴
太陽の光を浴びることで、生活リズムを整えることができます。
さらに、日光を浴びることで体の中でビタミンDが作られて「免疫力」もアップするといわれています。
このビタミンDは免疫力を強化させる働きがあります。
窓越しでも構わないので、太陽の光を感じられるようにしてあげましょう。
清潔な環境を保つ
私たちにとっても当たり前のことですが、じめじめしたり、ほこりっぽい環境での生活は、菌も繁殖しやすく、「免疫力」を低下させます。
神経質になる必要はありませんが、定期的にハウスのまわりをきれいにして、犬用のトイレも汚れたらすぐに片付けるように心がけ、快適に過ごせる環境を維持してあげましょう。
食事の改善
食材の中には、免疫細胞を活発化させるものが知られています。
免疫力を高める成分は、学術的に研究されているものも多く、その効果をかなり強く期待できるものもありますので、ドッグフードという加工食品が中心の犬には是非とも取り入れてあげたいものです。
さらには、ドッグフード自体をその犬の消化に適した高品質なものにすることも、免疫力アップには有効な方法だと考えられます。
ただし、実際に取り入れる際には、同じ成分であればどれでも同じ、ということではないので注意が必要です。
これらの成分は、その品質や加工方法によって健康増進効果は大きく異なるため、必ず、高品質なもの、不要な添加物を使用していないものを取り入れることが重要です。
また、腸内環境を整えることも免疫力アップに欠かすことができません。
腸内の環境を整える栄養成分も与えてあげることもいいでしょう。
サプリメントがおすすめ
犬に使ってあげるサプリメントは、ドッグフードに含まれているものやサプリメント形状のものがありますが、やはり添加物や加工の問題を考えると、化学合成などがされていない高品質なサプリメントで摂取させてあげることをお勧めします。
犬のサプリメントには酵素サプリメントやオリゴ糖、食物繊維、乳酸菌などの腸内細菌製剤といったものも免疫調整作用があります。
もちろん、これらのサプリメントもやはり高品質なものを選ぶことが重要です。
現在、新しい代替療法の柱となり得る「植物由来の極粒径炭素」も免疫調整作用に効果があるといわれています。
この「特別な炭素」のサプリメントは東大医学部で研究され、癌細胞に対する抗癌効果に関しての国際論文が、医療ジャーナルにも掲載されています。
欧米の医療ジャーナルに発表された論文の日本語翻訳版(PDF)
このような、大学で研究されていて、エビデンスがある高品質なサプリメントを摂取させることは、犬の免疫力を高めるには最適だと思いますが、最近は原材料が少ししか入っていなく、化学合成され添加物などが入ったサプリメントがあるので、飼い主さんも気をつけてあげてくださいね。
皆さんも、お勧めのサプリなどあったらコメントいただけると嬉しいです。
どんどん情報を頂ければ多くの方の参考になりますのでお待ちしております!
仔犬と高齢犬の免疫で気をつけたいこと
生まれたばかりの仔犬や、高齢になった老犬は、とくに「免疫力」が弱いため注意が必要です。
仔犬の免疫力
出産直後から数日間に出る母乳には、仔犬を病気から守る「免疫」が含まれています。
しかし、母犬からもらう「免疫」は2ヶ月ほどでなくなってしまうため、この「免疫」がなくなる前に1回目の予防接種を受けて、感染症に対する免疫を高めるることが必要です。
計3回の予防接種を終えるまでは免疫力がまだ不十分であるため、散歩などは控えるようにしましょう。
出かける際には抱いたり、キャリーバックにいれたりしてあげてください。
高齢犬の免疫力
「免疫力」は加齢とともに低下して、高齢犬になると病気にかかりやすくなります。
過ごしやすい環境を整え、おなかに優しい食事や、無理のない程度の運動をすることで病気の発生を少なくすることができます。
まとめ
愛犬が元気で長生きするために、免疫力を高めることは非常に大切です。
しかし、これらの方法を一つだけ行っても、なかなか効果は得られません。
様々な方法を組み合わせてあげることが重要ですし、さらには実際にその方法が合っているかどうかを確かめながら行うことも重要です。
仔犬の時期はとても免疫力が低いこと、また高齢になるにつれ徐々に免疫力が低下してくることも、飼い主として注意して見守ってあげる必要があります。人間でも、幼児やお年寄りは大事にしてあげるのが家族の役割です。
愛犬たちのことを考えて免疫力を高めて病気にかからないようにしてあげたいですね。
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