【獣医監修】犬の癌の中で発症しやすい扁平上皮癌を徹底解説

  記事監修
  獣医師 西村 美知子 ブルーミントン動物病院院長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業後、東京都武蔵野市吉祥寺で開業、2009年に現在の 東京の西荻窪に移転。 自然療法中心の病院です。検査から治療まで、精神的にも身体的にもストレスをできるだけかけずに動物さん個々が本来持つ「治癒力」が動き出すよう、様々な 自然療法をご提供しています。

犬の扁平上皮癌ってどんな病気なの?

『扁平上皮癌』は、皮膚の最上部を占めている扁平上皮『扁平上皮』と呼ばれる組織が癌になったものです。

他に皮膚にできる癌には、

メラニン細胞が癌化した『メラノーマ』
・線維芽細胞が癌化した『線維肉腫』

などがあります。

扁平上皮癌は激しく増殖し、見た目は潰瘍のように見えることが多い悪性腫瘍になります。

犬の腫瘍の約45%は皮膚に発症しているほどで、癌の中でも扁平上皮癌はとても発症しやすい病気です。

特に中年齢以降に発症しやすく、発症平均年齢は10歳〜12歳と言われています。

 

 

扁平上皮とは?

扁平上皮とは体のあちこちに存在します。

皮膚は顕微鏡レベルで見ると、一枚の皮ではなく、何層もの組織が重なって『皮膚』を構成しています。

その中の一つに扁平上皮が存在するのですが、それは皮膚に限らず、腸や子宮、あるいは歯肉や鼻腔の粘膜組織にも見られます。

扁平上皮癌はどんな場所にできるの?

犬の扁平上皮癌は、皮膚や歯肉、鼻腔内あるいは、まぶたや唇、足先での発生が多いとされています。

体の表面にできた時には、多くが潰瘍やただれをともなうため、傷や皮膚病と間違われやすい病気です。

 

原因

現在のところ、はっきりした原因は特定できていませんが、以下のようなことが原因になる可能性があります。

・日光

・慢性的な炎症

・ウイルス

・大気汚染、タバコ

・皮膚色素の減少、欠損

・被毛の減少



犬の扁平上皮癌にかかりやすい犬種は?

文献上は、スコティッシュテリア、ペキニーズ、ボクサー、プードル、ダックスフンド、ダルメシアンなどの犬種で発生が多いと言われています。

また、被毛が白い犬種のウエストハイランドホワイトテリアなども扁平上皮癌になりやすいと言われています。
黒や茶、灰色など暗色の被毛の大型犬も爪の周りに扁平上皮癌が発症することが多いとの報告もあります。

好発犬種は、黒系のラブラドールやフラット・コーテッド・レトリバー、ロットワイラーが発症しやすいと考えられています。

それぞれの場所に発生する扁平上皮癌について

犬の扁平上皮癌は、体のあちこちにできますが、それぞれの場所に発生する癌の症状などを見ていきたいと思います。

 

 

足先の扁平上皮癌

足先に見られる扁平上皮癌は、爪の根元から発生するケースが多く、この部位の扁平上皮癌に関しては、大型犬や黒色の犬に発生が多いと言われています。

好発品種は、大型犬や黒色の犬で10歳頃に多く発症すると言われています。

 

症状
見た目にはイボのようになっていることもありますし、腫れているように見えることもあります。さらには皮膚の扁平上皮癌と同じように、かさぶたが付いていたり、潰瘍状になっている場合もあります。

爪の付近にできる腫瘍で悪化や成長のスピードが速いものは要注意です。

爪の下にある上皮細胞が腫瘍化した場合は、足先の腫れや潰瘍、足先を引きずるといった症状を示します。

 

検査
足先の扁平上皮癌は、大きさにもよりますが、細胞診検査や外科切除後の病理検査が有効です。
しかし、足先の扁平上皮癌は外科的な切除が非常に難しいとされます。

場合によっては、検査のために、しこりの一部だけを切除して検査をし、扁平上皮癌が確定したのち、再度、癌の完全切除を目指した手術を行うこともあります。

 

体表皮膚の扁平上皮癌

皮膚の扁平上皮癌は見た目には様々な姿で現れます。

決して見た目で判断せず、「しこりかな?」と思ったら、あるいは「傷だと思ったのに治りが悪いな」と思ったら、必ず動物病院を受診しましょう。

症状
皮膚に発生する扁平上皮癌は、一見するとただのかさぶたにしか見えなかったり、さらにはただのイボ、あるいはジュクジュクとした潰瘍のように見えることがあります。

しかも数ヶ月もの間、治ったり再発したりを繰り返し、『治りの悪い傷』のように見えることもあります。

また、見た目にかさぶたや潰瘍が見られない場合は、良性の腫瘍のように見えてしまい、扁平上皮癌と気づかず見過ごしてしまう可能性もあるため注意が必要です。

 

検査
細胞診検査(しこりに針を刺して細胞を採取し、それを顕微鏡でチェックする検査)で確認するようにしましょう。

ただし、針での細胞診検査では扁平上皮癌は診断しきれないこともありますので、その時は手術による外科的切除を行い、より確実な病理検査を受けることが大切です。

 

鼻腔内の扁平上皮癌

鼻腔内の扁平上皮癌は、鼻の中の空洞に発生する癌のため、直接その姿を見ることができません。

好発年齢は9.5歳です。

 

症状
最初は鼻炎のような症状(くしゃみや鼻汁、あるいは流涙)しか見られないことも多いです。

この時点で気が付いてあげるためにも、くしゃみや鼻水などをするようになったら動物病院で念のため検査してもらいましょう。

進行すると鼻腔内で癌が大きくなり、見た目にも、鼻筋が片方だけ異常に盛り上がったり、あるいは癌に侵されている側の眼球が出てきたりというような顔面の変形が見られるようになります。
さらに鼻腔内の炎症も進むと、鼻血や膿を持った緑や黄色の鼻汁が見られるようになります。


また、鼻腔の前方に多く発生する、「非角質化」の腫瘍は、3割以上が脳へ広がると言われています。

 

検査
鼻腔内の扁平上皮癌は外からは見ることができないため、CTやMRIといった画像診断機器と鼻腔内生検が有効です。

CTやMRIは持っている施設が限られますし、鼻腔内生検ではそれなりに出血も伴う検査となります。さらには検査自体に全身麻酔が必要です。これらは検査自体にリスクがありますし、それなりに費用もかかります。

しかし、やはり他の扁平上皮癌と同様、積極的な治療を行うには早期発見が非常に大切ですので、しっかりとメリットデメリットを踏まえ、検査を進めていただければと思います。

 

歯肉および舌の扁平上皮癌

歯肉や舌にできる癌は、扁平上皮癌の割合が多いようです。

このため歯肉や舌に「できもの」がある時は、扁平上皮癌を常に疑う必要があります。
しかし、普段からこまめにチェックしないと見逃すことが多い場所です。


また、歯の裏側や奥歯周辺、舌の根本周辺は、しっかり見ることが難しい場所なので、そういったところのしこりも見逃さないように、入念にチェックする必要があります。


好発年齢は10.5歳で、中型から大型犬に多いと言われています。

 

症状
歯肉や舌にできる扁平上皮癌も皮膚と同じように見た目は様々で、ポリープ状に見えることもあれば、口内炎のように赤く腫れている場合もあります。

さらには、口臭や歯肉からの出血など、歯周病と同じような症状が見られたり、発見が遅れた場合には、よだれや食欲低下、さらには食事をうまく飲み込めないなどの症状が見られることもあります。

 

検査
歯肉や舌にできたしこりは、皮膚のように針を刺したりすることが難しく、診断のために全身麻酔での検査が必要になることもあります。

しかし、悪性のものであるのが間違いなさそうで、切除可能そうな場合(また転移がなさそうな場合)は、検査をせず麻酔をかけて手術して切除し、その組織で初めて診断とする(なる)場合もあるため、先に検査、検査とも言えないこともあります。


また、口先にできた腫瘍を完全に切除することができれば、予後は良好とされています。

 

扁桃の扁平上皮癌

転移性が高く、症状の9割以上で近くのリンパ節、6割以上で肺、2割以上で遠隔臓器への転移が認められるといいます。

 

症状
扁桃に発症した場合は、よだれが多い、口臭が悪化、エサを飲み込めない、口から血のようなものを出す。


また扁桃の腫れ、頸部リンパ節の腫れといった症状を示します。

 

検査
扁桃扁平上皮癌も歯肉や舌にできたものと同じ様に全身麻酔をしないと診断は難しいのでで腫瘍の大きさや転移があるかないかなども含め検査法など獣医さんとよく相談してください

 

肺の扁平上皮癌

好発年齢は11歳を過ぎてから多くなると言われています。

田舎よりも都会で暮らす犬に多いとされ、発生部位の多くは右肺後葉です。

症状
肺に発症した場合は、乾いた咳、呼吸困難、元気がない、体重減少、喘鳴、喀血(咳と共に血を吐く)といった症状を示します。

 

検査
肺にだけ癌がみとめられる場合は、細胞診を行える場合もありますが困難な場合もあります。

CT等で癌の範囲や部位の確定をして手術適応であった場合に、摘出した組織での検査結果で扁平上皮癌の診断が出る場合もあります。


レントゲンで肺に腫物が見つかった場合で、別部位に癌がある場合は、早期発見ではない可能性が高いので、検査を行うかどうかを獣医さんとよく相談してください。


動物の体に優しい診断方法

以前、私が訪れ、現在記事の監修をして頂いているブルーミントン動物病院では、動物の体に優しい診断方法を実施しています。

身体に針を刺したり、麻酔をかけたり、メスを入れたりしない方法、つまり身体にストレスをかけない方法で、全身機能から、心理機能まで調べることができる検査です。

治療法

 

外科手術

犬の扁平上皮癌の治療方法は手術による癌の完全切除が基本になります。

 

扁平上皮癌は、他の癌と比べて転移時期が遅いケースが多く、早期発見と積極的な外科切除によって、完治を目指せることがあります。

ただし、細胞レベルで扁平上皮癌がしこりの周辺に散らばっていることが多いため、外科切除では、見た目よりもかなり大きく切除する必要があります。
それにより細胞レベルの癌細胞まで完全に切除できた場合は、完治させることができます。


外科手術は広範囲の除去をするため治療としての効果は高いですが、老犬になるほど全身麻酔に耐えられる体力がなくなっていくので、
希望しても行えないケースも少なくありません。出来るだけ早い発見が大切になります。


癌が進行している場合や、犬に体力が無くなっている場合、他の器官への転移が見られる場合などは、抗癌剤や放射線による内科的治療が行われます。
しかし扁平上皮癌は抗癌剤が効きづらいということと、治療費が高額ということから、やむを得ず自然療法に切り替える飼い主さんも多いようです。

 

扁桃に癌が発生した場合は、転移する可能性が高く、また手術してもほとんどの犬が1年以内で亡くなっている状況から、外科手術をせず別の方法を提案されることもあります。

 

 

外科手術の問題点について

扁平上皮癌ができる場所によっては、外科切除が犬にかなりの負担を与えてしまうことがあります。


例えば、歯肉にできた扁平上皮癌では、癌とともに顎の一部、もしくは顎の片側全部を切除する必要がありますが、手術後は、見た目が痛々しい姿になってしまったり、食事の食べこぼしが多くなるといった機能的な問題が出てしまうこともあります。

さらに、足先にできた扁平上皮癌では、しこりだけでなく、断脚術といって、足の一部ごと切断する必要があります。


そうなると三本足で歩かなければならなくなり、犬にとってもまた飼い主の方にとっても辛い思いをさせてしまうのですが、そこまで思い切った治療をしないと、再発や転移してしまい、十分な治療効果が得られなくなってしまうのです。恐ろしいですよね。

 

 

外科手術以外の治療法として

鼻腔内の扁平上皮癌、あるいは他の扁平上皮癌でも、完全な外科切除ができないケース、あるいは外科切除自体が不可能なケースでは、放射線療法や化学療法(抗癌剤療法)を行います。

 

放射線療法

放射線療法は実施できる施設が限られますが、外科切除と組み合わせることで、完全な切除ができなかったケースでも、放射線療法が有効に働いているケースもあります。


しかし、まだ十分な効果は検証されていません。放射線療法を実施する場合は、メリットとデメリット、あるいは実施施設の有効性やリスクなどを十分に確認した上で受けるようにしましょう。

 

 

化学療法(抗癌剤治療)

犬の扁平上皮癌に対する化学療法は、様々な抗癌剤を用いて行われていますが、犬の延命効果や生活の質を向上させる効果が得られる方法は、未だ十分に確立はされていません。

ごく限られた施設ではありますが、化学療法の中でも『動注化学療法』と呼ばれる方法を取り入れている施設もあります。


動注化学療法は通常の化学療法よりもより強力に抗癌剤を作用させながら、なおかつ副作用が少なくできる治療法で、鼻腔内の扁平上皮癌など、手術ができない癌に対して、有効となる可能性があります。


動注化学療法については、獣医療ではまだまだ研究レベルの治療方法のため、実施にあたっては、その施設の獣医師と十分にコミュニケーションをとって行う必要があります。

 

もうひとつ現在、注目されつつある療法があります。
それは『POC療法』という療法で東京大学医学部で研究中の素材であり、単独で抗癌剤を使うよりも、その素材を併用して治療をすることで、抗癌効果がさらに出たということが証明されたものです。

その証明が欧米の医療ジャーナルで論文に掲載されています。

 

論文掲載の欧米医療ジャーナル

Jounals リポート

 

Summary

Full Text(PDF)

欧米の医療ジャーナルに発表された論文の日本語翻訳版(PDF)


その素材は、「植物由来の極小径炭素」というものです。

化学物質とは無縁のケミカルフリーのため、愛犬の体に負担がなく、『POC療法』して徐々に普及されていくものになるようです。

そして、免疫調整作用に効果があるといわれていて、自身の自然治癒力も高めることが期待出来ます。

 

予防や注意点


紫外線

犬の扁平上皮癌の中には、紫外線を強く浴びるとその発生が増えるといわれているものもありますので、紫外線を浴びすぎないようにすることは、ある種の扁平上皮癌を予防するのに効果があるかもしれません。

 

炎症
いずれの犬の扁平上皮癌も何かしらの『炎症』が関わっている可能性があるといわれています。

そのため、例えば歯肉や舌の炎症に関わる歯周病対策(歯石および歯周ポケットのクリーニング)やアレルギー性皮膚炎など慢性皮膚炎のコントロールなどを行うことが予防につながるかもしれません。

 

タバコ
飼い主さんの喫煙にも気を付けましょう。

飼い主さんの健康のためにも禁煙をすることをお勧めしますが、無理であれば、タバコを吸うときは外に出る、換気扇を使うなど、愛犬に対しての配慮がとても大切です。

ただし、これらはあくまで個人的な見解で、科学的なデータに基づくものではありません。

扁平上皮癌の対策を考える場合は、かかりつけの獣医さんとしっかり相談のうえ、実施するようにしてください。


まとめ

 

扁平上皮癌は、四肢や爪の周り、腹部や陰嚢など皮膚が存在するところに腫瘍が発生することが多いと言われています。

また、口腔内や鼻腔に発生した場合でも、顔面が変形したり、唇付近に潰瘍ができることが多く、飼い主さんでも目視できるような箇所に発症しますので、日頃から愛犬の顔を見て、スキンシップを兼ねてマッサージをしてあげるなどの健康チェックしてあげることが、早期発見・早期治療に繋がるでしょう。

また、癌を完璧に予防することは難しいのが実情ですので、人間の病気でも同じですが、予防するための努力も大事です。


私たち人間は、病気にならないよう自分自身で対処することが出来ますが、犬や猫は自分で予防することはできません。
私たち飼い主が、愛する犬の健康のために普段から免疫力を高めてあげられるような方策を試してあげることも大事ですよね。

 

体に負担がない適度な運動や、ストレスの少ない生活環境を整えてあげる、栄養バランスのとれた良質な食事やサプリメントを上手に利用し免疫力を維持して、小さな家族を守ってあげてくださいね。

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今は、猫を飼おうかどうか迷っている最中。
なぜなら、猫アレルギーがありまして。。。

 

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そのため犬や猫を飼っている方とお話をする機会があり、そのなかで人間と同じように病気になる子たちが多いことにびっくりしました。

 

そこで、自分が猫を飼うにあったって、病気のこととかをもう少し詳しく知りたいなと思って調べ始めました。

 

いろいろと調べるうちに、獣医さんや、ペット関連のお仕事をする方たちと、交流が生まれました。

 

その中で、興味深い情報などが聞けたりして、これは自分だけの物にとどめておくのはもったいないと思い、ブログを作り情報をお届けしようと考え、この『どうぶつの気持ち』を作りました。

 

 

 
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