生活環境が豊かになり、猫の平均寿命もだんだんと伸びています。
ペットの約4頭に1頭が生涯のうちに癌を発症すると報告されており、10才以上の犬の約45%が、癌で死亡しています。
2頭に1頭って多いですよね。
私たちが考えている以上に癌になる犬や猫は多く、決して特別なことではないんです。
感染症を予防するワクチンも普及し、いろいろな病気に対する治療法も進歩しました。その結果、猫にも老齢になってかかりやすい病気が増えてきました。
癌もそのひとつです。
記事監修
獣医師 西村 美知子 ブルーミントン動物病院院長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業後、東京都武蔵野市吉祥寺で開業、2009年に現在の 東京の西荻窪に移転。 自然療法中心の病院です。検査から治療まで、精神的にも身体的にもストレスをできるだけかけずに動物さん個々が本来持つ「治癒力」が動き出すよう、様々な 自然療法をご提供しています。
目次
猫の癌とは?
「癌」というのは、もともとは正常な細胞が、あるとき急に変化して異常な細胞に変化したものです。
この異常な癌細胞は限りなく増えつづけ、正常な細胞が本来の働きを果たせなくなります。
そしてついには周りの正常な組織まで広がって害を及ぼしてしまうのです。
もし、癌が見つかった場合、一刻も早く対応することが大切です。
癌の種類によっては手術で切除すれば安心できるものも少なくないからです。
猫の癌の原因はさまざまですが、どの場合にも、初期の治療がとても大切です。
癌の良性・悪性って聞くけど
癌細胞には良性と悪性があります。
良性腫瘍
良性腫瘍も腫瘍なので、細胞が不用意に増殖する状態です。ただし、体へのダメージが比較的少なく、早期に手術できれば完治も期待できることが多いのです。
・癌細胞の増殖スピードが遅い
・転移をすることが少ない
・周りの組織に浸潤しにくく膨らむように大きくなる
悪性腫瘍
悪性腫瘍は体へのダメージが大きいのが特徴です。
一般的に癌(がん)というと、この悪性腫瘍のことを指します。
・増殖スピードがはやく正常な組織をどんどんと破壊していく
・他の組織に転移する
・周りの組織に浸潤するように(しみこむように)広がってゆく
悪性腫瘍は組織によって種類分け
悪性腫瘍は癌腫(がんしゅ)と肉腫(にくしゅ)とに分類されています。
癌の発生部位によって~癌、~肉腫という呼ばれ方をします。
・癌腫:皮膚や粘膜、乳腺などから発生する上皮性のもの、リンパ管に乗って転移
・肉腫:筋肉や骨、神経などから発生するものを上皮性でない(非上皮性)もの、血管に乗って転移
腫瘍の種類によっては、何年もかけて大きくなるものや、転移をせず原発部位だけで広がっていくものもあります。また逆に、良性でも、どんどん大きくなるもの、再発を繰り返すものもあります。
腫瘍は全身の組織にできる可能性があり、良性、悪性さまざまな腫瘍性疾患の発生があります。
猫は全身を被毛で覆われているため、皮膚の腫瘍や皮膚の下にできている腫瘍でも発見しづらいものです。
しかし、 皮膚腫瘍、皮下にできる一部の腫瘍は見たり触ったりすることで病変を確認することができますので、たとえ被毛で覆われていても、少し注意をしてあげることで早期発見が可能になります。
一方で、体腔内にできた腫瘍ではなかなか簡単に発見できるものではありません。
定期的に健康診断を受けさせている方もおられるとは思いますが、それでもやはり症状が出る前に発見をすることは難しいものです。
猫の癌の原因
猫の場合、白血病やリンパ腫の発生には猫白血病ウイルス(FeLV)の感染が関与していることが分かっています。
しかし、それ以外では原因ははっきりとはしていませんが、以下のような原因も示唆されます。
遺伝的な要因
遺伝的な要因としては前述している通りDNAが傷つき、その傷ついたDNAが増えることにより癌が発生するというものです。
化学的要因(環境因子・農薬・除草剤・殺虫剤)
化学的要因では必ずしも特定の化学物質が原因ということではなく、リスクが高まるとされています。
例えば農薬や除草剤の中でも、リンパ腫の発生確率が高くなると言われているものや、移行上皮癌と関連する危険性が指摘されているものがありますが、未だ立証できる証拠はありません。
物理的要因(日光・磁場)
日光は人でも扁平上皮癌の関連性が指摘されているように、犬や猫(特に白い毛の猫の頭頚部)でも扁平上皮癌が日光や紫外線の影響により発生すると言われています。
また、1995年に行われた調査によると、磁場に晒されている時間が長ければ長いほど、また磁場が強ければ強いほど、犬のリンパ肉腫が発生しやすくなるとの結果が出ています。
「猫には全く無関係」と証明されない限り、危険因子として考えておいた方がよいでしょう。
ホルモン的要因
(エストロジェン・プロジェステロン・アンドロジェン・テストステロン)
ホルモン的要因としてメスの乳腺癌が有名ですが、メカニズムはまだ明らかにされていません。
肛門周囲腺腫と言われる良性腫瘍の発生は、アンドロジェンが原因と明確に証明されていますが、肛門周囲腺癌は去勢や未去勢の犬でも発生するためホルモンの関係性は低いとされています。
テストステロンと前立腺癌の関連性が立証された報告はありませんが、前立腺癌は去勢している犬が発症しやすいと仮定されている報告もあります。
生物的要因(病原性ウイルス)
猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)などは、主に血液細胞の癌を引き起こすと言われています。
生物的要因の病原性ウイルスの中には、パピローマウイルスという乳頭腫を作るウイルスが、まれに扁平上皮癌の原因になるとの報告もありますが、確率は低いものです。
たばこの受動喫煙
2002年に行われた研究では、「二次喫煙を余儀なくされている猫では悪性リンパ腫の発症率が高まる」との可能性が示唆されています。
また2004年に行われた研究では、「被毛に付着したタバコの煙成分をなめとることにより、扁平上皮癌の発症率が高まる」との結果が出ています。
癌にかかりやすい猫の種類
猫の癌の中で代表的なものに、「リンパ腫」、「乳癌」、「扁平上皮癌」があります。
・リンパ腫 :老齢の猫
・乳癌 :避妊手術を受けていないメスの猫、とくに年を取ってから出産した猫
・扁平上皮癌:白い毛の猫におこりやすい
それぞれ特徴はありますが、癌はすべての品種の猫に起こりうる病気だといえます。
猫の癌の症状
癌にはわかりやすく特有の症状というものがないため、発見が遅れることもめずらしくありません。しかし、癌のサインといわれる症状はあります。
以下のようなサインがいくつか当てはまる場合、すぐに獣医さんに診てもらうようにしてください。
症状のサイン
★「傷やただれ」が治らない
★「食欲」がなくなる
★皮膚や口の中などにできた「こぶ」がなかなか治らない。または、しだいに大きくなる
★口や鼻の穴、肛門などから「血もしくは膿」がでる
★体からいやな「におい」がする
★理由が分からずに「体重」が減る
★食べ物を食べにくそうにしたり飲み込みづらそうにする
★運動をいやがる、体力がなくなる
★足を引きずりつづける、体の一部の「麻痺」が続く
★呼吸が不自然になる、おしっこやうんちをするのが困難になる
この他、特に、顔や耳の形が変わったり、乾いた咳が続いたり、おなかが腫れていたり、おしっこやうんちの様子がおかしいと感じた場合は危険性が高いため、急いで診察を受けてください。
猫の癌の治療法
癌が見つかった場合、詳しい検査をおこない、その診断結果によってもっとも適した治療法を選択します。
また、治療した後にどのような経過をたどるかも、検査から判断できます。
具体的な治療法としては、
外科手術
癌を手術で取り除く治療法
・メリット
病巣の周辺組織や転移を起こしているリンパ節なども同時に切除できるため、癌を一気に取れる。
転移を起こしていない場合では、完治も期待できる治療法です。
・デメリット
全身麻酔をかけた上でメスを入れるので、体に負担がかかります。副作用が少ない反面、外見や運動機能を損なってしまうこともあります(手足や顎の切断など)。
また麻酔や手術に伴う合併症で死亡してしまう危険性もゼロではありません。
化学療法
抗癌剤など薬を用いる治療法
・メリット
全身麻酔や外科手術ではないため麻酔のリスクや痛みが無いことです。
また、化学療法によって腫瘍が根治することはまれですが、癌細胞の分裂や増殖を抑制することで犬や猫の生活の質(QOL)を維持する効果は充分にあります。
・デメリット
抗癌剤は全身に作用するので、癌細胞以外の正常な細胞にまで影響を及ぼします。
骨髄抑制や脱毛といった副作用があったり、投与を重ねれば重ねるほど治療効果が薄くなったり、効果がでない場合もあります。
放射線
放射線を当てて癌細胞にダメージを与える治療法
・メリット
治療中は動いてはいけないので全身麻酔は必要ですが、メスを入れる必要がないため痛みは感じにくいことが特徴です。また外科療法では対処できない、脳や心臓などの部位にも対応できるといったメリットがあります。
癌の種類によっては化学療法よりも治療成績が良い場合もあります。
・デメリット
癌細胞に直接放射線を当てなければならないので、手術と同じで肉眼で見つけられないような小さな移転を治療することはできません。
さらに、放射線治療は正常な細胞も傷つけてしまうため、中には副作用として放射線障害が起こることが知られています。
また最新医療となっているため、高額な医療費が必要となる点も大きなデメリットと言えるでしょう。
状況によってこれらを組み合わせて治療することもあります。
また、癌の性質や進行状況によって回復を望めないときには、猫ができるだけ苦しまずに一日でも長生きできるような治療を目標におこないます。
三大療法以外の代替療法
外科手術、放射線、化学療法の西洋医学の他にも東洋医学、代替療法を施してる動物病院もあります。
東洋医学や代替療法については様々な種類があるので、それは症状や猫の状態によって、三大療法と組み合わせる場合もあります。
また、従来の代替療法に加え、新しい代替療法も出てきています。
このPOC療法に使われている東京大学医学部で研究中である「植物由来の極小径炭素」の素材が、癌細胞に対する抗癌効果が認められたという論文が欧米の医療ジャーナルに掲載されました。
猫の癌でもっとも良い効果は?
猫の癌でもっとも良い効果をあげているのは、健康診断による早期発見と早期治療です。
特に体の表面にできた癌は、猫の体をなでたり触ったりする日常生活の中で早い時期にみつけることができます。
また、高齢になるにつれて癌を発症しやすくなるので、7〜8歳をすぎたら定期的な検診を受けることも大切です。
猫が癌になったときの余命は
愛猫が癌と宣告された場合、治療方法も気になりますが、どれくらい一緒にいられるのかという余命も気になりますね。
癌の進行具合などによっても、余命は変わりますが、猫の癌は高齢が多いですので、何年も一緒にというのは難しいかもしれません。
しかし、あと残りわずかな時間を一緒にいられる時間を大切に過ごしたいものです。
猫が苦しまないように、最期まで快適に過ごせるように、QOL(生活の質)を考えて、食事や、いつも猫がいる環境を整えてあげてください。
猫の癌の早期発見チェック・予防
癌は確実に予防できるものではありません。
また、胸腔内や腹腔内に出来る癌に関しては、外からではなかなか分かるものではありません。
愛猫が高齢になるにつれて、癌のリスクも高まってきますので、定期的に動物病院での画像診断検査の受診をお勧めします。
そして毎日動物の状態を確認し、元気があるか、食欲はあるか、便・尿の状態はどうかのチェックすることで、癌のリスクを減らすこともできます。
目、耳、口腔内、肛門周囲を目で見て確認して、頭から尾の先までの皮膚を触ってあげて、体に何か腫瘍がないかなど「獣医さんの気持ちになりながら」日々触っていただきたいと思います。
また、癌の予防には、常日頃から免疫力を高めるような食事やサプリメントを使用することもとても大事な要素になります。
仔猫の時から良質な食事やサプリメントで体に抵抗力をつけ、病気にならないようにすること、すなわち「予防医学」ってとても重要なことなんです。
こちらのサプリメント療法は『予防』『癌治療をサポート』するのには猫の体に優しく、猫自身の治癒力を高める事が期待されたQOLを考えた療法です。
↓
POC療法
学術的にも明らかになっている、生命維持活動に欠かすことのできない必要な成分が入っています。
わたしたち人間の世界でも「いかに病気にならないように食事などを考えていくか」という「予防医学」の取り組みは多くの病院、医師が推奨しています。
たとえば、「メタボ」の予防で生活習慣病の罹患リスクを低減させようという取り組みは良く耳にするでしょう。
これは、生活習慣病になってから対処するのではなく、生活習慣病に罹らないために前もって何をすべきかを提唱しています。まさに、「予防医学」の考え方なのです。
実は、猫の世界でも同じことが言えます。
いかに、病気にかかりにくい体にしていくか、「予防医学」の取り組みを実践することは「健康で長生きできるかどうか」に大きく影響してきます。
このように重要な取り組みである「予防医学」の考えに積極的に取り組む動物病院も少しずつ増えてきているようです。
「予防医学」に力を入れている獣医さんは、日頃の食生活の指導に力を入れながら、サプリメントの使用の仕方も相談に乗ってくれます。
また、治療法も従来の西洋医学の手法と併せて、より広範囲な対処方を組み合わせたりする代替療法に力を入れていたりします。
猫の病気だけを見るのではなく、猫の生活環境や猫全体の様子を見て、その子に合わせた予防や治療を施してくれます。
愛猫のことを病気になったときだけではなく、普段の接し方、食事のことなど、いつでも相談できる、かかりつけの獣医さんがいれば安心ですよね。
私が取材の中で出会った街の獣医さんで「予防医学」にも力を入れている動物病院の院長先生がいらっしゃいます。
このような動物病院で愛猫を診ていただけると、飼い主さんも安心ですよね。
まとめ
生物の身体は何億何兆という膨大な数の細胞が集まって成り立っています。
この細胞の塊である生命体は、古くなった細胞は死んで、新しい細胞を作り出すシステムをもっており、そのおかげで生物はいつでもイキイキと活動できるのです。
しかし、この素晴らしいシステムも何度も操り返していると故障することがあります。
古い細胞をコピーして新しい細胞を作る役割を担うものを「遺伝子」と呼びますが、書類を何百枚もコピーしていると、初めはなかったシミが徐々にできていくように、遺伝子にもだんだんとキズがつき、それがひどくなると癌になってしまうのです。
したがって、年をとれば、癌になる確率も当然高くなるというわけです。
ある意昧では、人間も動物も癌になるくらい長生きできるようになったことは喜ばしいことかもしれません。
しかし、これからは、人間だけでなく、動物たちも一緒に癌と闘っていかねばならない時代に入っているのです。
このことは犬や猫の癌治療にも反映され、現在人間で行われている治療の主なものは動物でも行えるようになっています。
しかし、ここで人間の医療と獣医療の決定的な違いがあります。
そもそも人間の医療は一日でも長く生きることを目的とした延命治療から発生しています。入院して強力な抗癌治療を行ってでも、癌を治して長生きをさせようとします。
しかし、獣医療では動物の生活を犠牲にしてまでも強力な癌治療を行うことはしません。長い間入院してチューブにつないで長生きさせることは望んではいないのです。
もちろん獣医療でも延命をめざし治療を行いますが、本来の目的はQOL(生活・生命の質)の向上を重視しています。
癌で苦しんで長生きするより、長く生きることができなくても楽しく毎日をおくれる治療を行うということです。
動物の一日は人間の一日と同じではありません。
私たちの80年を彼らは15年に濃縮して精一杯生きています。
その一日一日を私たちは愛猫の幸せを考えて、病気になってから食事を見直したり、サプリメントを与えるのではなく、仔猫のころから病気にならないように小さな家族の健康を管理して大事にしてあげたいですよね。
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