【獣医師監修】愛犬が急性腎不全に!原因・治療法について徹底解説

犬の急性腎不全は症状の悪化が急激

腎不全は、急激に生じる「急性腎不全」とじわじわ悪化して腎不全に至る「慢性腎不全」に分けられます。

急性腎不全は治る可能性がありますが、慢性腎不全は治ることはなく、「病気の進行を遅らせる」「症状を緩和する」といった治療になります。

犬の急性腎不全は原因が生じてから早くて6時間、遅くても1週間以内に発症し、急激に症状が悪化します。

一時的に低下した機能は、早期診断し、適切な治療によって回復させることができます。

慢性腎臓病に比べ発生率は低いものの、予防することは難しく、治療が功をそうさない場合は死にいたることもある病気です。

今回は犬の急性腎不全について解説したいと思います。

 

  記事監修
  獣医師 西村 美知子 ブルーミントン動物病院院長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業後、東京都武蔵野市吉祥寺で開業、2009年に現在の東京の西荻窪に移転。 自然療法中心の病院です。検査から治療まで、精神的にも身体的にもストレスを できるだけかけずに、動物さん個々が本来持つ「治癒力」が動き出すよう、様々な 自然療法をご提供しています。

原因

犬の急性腎不全の主な原因はいくつかあります。
一番多い原因は、腎臓に毒性を持つ薬剤や、食品、植物を摂取してしまう腎毒性のある中毒性物質によるものと、腎臓での血流の著しい低下によるものです。

 

中毒によるダメージ

犬の急性腎不全の代表が中毒です。

「腎毒性物質」と言われる腎臓に毒となる物質を飲み込んでしまうことで急性腎不全を起こすことがあります。

心臓から全身へ送られる血液の約20%は腎臓へと送られるといわれています。
よって血液中の中毒性物質が腎臓に集まりやすく、さらに腎臓で行われるろ過や再吸収の過程で高濃度な中毒性物質にさらされることとなります。

具体的には身近にある腎毒性物質は、

*鉛が入っているペンキ

*ブドウ

*レーズン

*ユリ科の植物

*人の風邪薬

*農薬、除草剤、重金属

などになります。

 

これらの腎毒性物質を飲み込むと、数時間から1日くらいで急性腎不全を起こすことがあります。

 

腎臓自体の障害(腎性)

腎臓自体が障害を受け起こる急性腎不全で「腎性急性腎不全」とも呼ばれます。

 
*感染(レプストピラ症)

*腎盂腎炎

*中毒

*免疫が関わる腎臓の病気

*ショック

などが原因になります。

 

腎臓への血流悪化(腎前性)

腎臓での血液のろ過量や必要な量の酸素と栄養が十分に維持できず、腎臓に障害が生じます。

*心臓疾患

*敗血症

*熱中症

*出血

*輸血

*鎮痛剤

*血管拡張剤

*深い麻酔

などが原因になります。

 

尿のトラブル(腎後性)

尿の通り道である尿路(尿管・膀胱・尿道)が詰まってしまい、尿を外に出せなくなると、腎臓が尿でパンパンになってしまいます。
腎後性急性腎不全とも呼ばれています。

*尿路結石

*膀胱腫瘍、尿道腫瘍

*膣腫瘍、前立腺腫瘍

*会陰ヘルニア

*膀胱破裂

などが原因になります。

 

症状

犬の急性腎不全は1日で急激に悪化します。

進行すると最終的に尿毒症とよばれる症状になります。

早急に適切な治療をしないと死に至ることもあります。

他の症状として以下のものがあります。

 

*嘔吐

*下痢

*脱水

*食欲不振

*よだれが出る

*動きたがらない

*ほとんど排尿しない

*背中をまるめる

など

 

治療法

犬の急性腎不全の治療は、原因によって大きく異なりますが、治療で大切なことは、腎臓の働きを悪くさせている原因となるものをできるだけ早く取り除く必要があります。毒性のあるものを食べてしまった場合は、食べてすぐであれば「吐かせる」「血管から点滴をして少しでもその物質を薄める」「一刻も早く尿を体外へ排出」させることです。

尿が出ない状態が数日続くと命にかかわる危険性があるため、一過性に悪化した腎臓の機能が回復するまで、様々な治療で命をつなぎます。

主に原因の治療と点滴を行います。多くの場合は入院の治療が必要です。

 

腎臓にダメージがある場合

腎臓にダメージを与えている原因を取り除きます。

腎臓に影響のある薬物(抗癌剤など)を投与していた場合はすぐに中止し、レプトスピラなどの感染症が疑われる場合には、適切な抗生物質を投与したりします。

また、腎臓に毒性のある物質を誤って飲み込んでしまった場合には、吐かせる・内視鏡で胃を洗浄する・活性炭などの吸着剤を投与するなどの治療が有効ですが、飲み込んでから時間が経ってしまうと手遅れになってしまうこともあります。

 

尿が排出できない場合

乏尿(尿の出が悪くなる)、無尿(全く尿が出なくなる)の場合は、尿度にカテーテルを通すことで尿道を確保します。

体内にたまってしまった尿を、一刻も早く排出させることが重要です。
ただし、カテーテルが通らないこともあり、手術が必要な場合もあります。

その他、血液検査でカリウムが異常に高い場合やナトリウムなどの電解質のバランスが崩れていたりする場合は不整脈や心停止を起こす恐れがあるので、バランスを戻すための治療が行われます。主に輸液中に必要な薬剤が加えられます。

また、嘔吐がみられる場合には制吐剤や胃薬などを投与します。

これらの治療を行っても改善がみられない場合は、腹膜透析や血液透析などの透析治療を検討しますが、実施できる施設は限られているので、かかりつけの獣医さんとよく相談しましょう。

 

血液量が減少している場合

嘔吐・下痢、ショックなどによって体が脱水状態にあるため、静脈点滴で体内の水分を増やす治療がメインとなります。

点滴をすることで腎臓の機能が回復し、尿が出るようになることが期待されます。
点滴をしても尿が出ない場合は、利尿剤や腎臓の血流を増やす薬(ドパミン)を投与することもあります。

血液量が減っている状態が続くと、ネフロンがダメージを受けてしまうので、早めの処置が必要となります。

 

 

急性腎不全の治療期間

急性腎不全は、1日~1週間程度の治療が必要になることが多いですが、もう少し長引くこともあります。

尿道閉塞の場合は閉塞がうまく解除できればそのまま治療を終了することもありますが、結石や腫瘍などの根本的な原因の治療が必要になることもあります。

急性腎不全は発症してから急激な経過で数時間~数日で山を迎えることが多いので早期に発見し治療が開始できれば完治ができる可能性があります。

しかしその一方、1日で亡くなってしまうこともある怖い病気です。また、治療のタイミングが遅れてしまって慢性腎不全へ移行してしまうこともあります。

急性腎不全の治療が成功するかは、腎不全の原因にもよりますが、どれだけ早く治療を開始するかにもかかっています。
少しでも急性腎不全の可能性がある場合は、すぐにでも動物病院で診てもらった方がいいでしょう。

 

予防法

犬の急性腎不全の予防法ですが、腎毒性のある食物・植物や化学物質、人の薬(イブプロフェン等)などを誤って摂取しないようにすることです。

また散歩中の誤食を避けるなど十分対策しましょう。

他には急性腎不全の原因のひとつであるレプトスピラ症はワクチン接種で予防できます。

尿路閉塞や腎盂腎炎、低血圧などは基本的には何らかの基礎疾患があり、それが原因となって急性腎不全を起こします。

急性腎不全は早期に適切な治療を始めることが非常に重要で、その後の結果を左右します。

 

まとめ

急性の腎不全は、すぐに治療をしなければ命を落とす可能性の高い病気です。

愛犬に腎不全と思われる症状が見られたら、すぐに病院で看てもらいましょう。

腎不全の原因の項目で既述したように、ブドウ・レーズン・ペンキ・薬などの中毒により急性腎不全になる場合が多々あります。

そして乏尿・無尿の場合には救命率は著しく下がります(血液透析を受けたとしても救命率は20-40%と言われています)ので、中毒の原因となる物質を取らせないように予防策をとることが重要です。

また、日頃から排尿時の様子や尿の色、量を知っておき、おかしいなと思ったらすぐに受診しましょう。

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今は、猫を飼おうかどうか迷っている最中。
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そのため犬や猫を飼っている方とお話をする機会があり、そのなかで人間と同じように病気になる子たちが多いことにびっくりしました。

 

そこで、自分が猫を飼うにあったって、病気のこととかをもう少し詳しく知りたいなと思って調べ始めました。

 

いろいろと調べるうちに、獣医さんや、ペット関連のお仕事をする方たちと、交流が生まれました。

 

その中で、興味深い情報などが聞けたりして、これは自分だけの物にとどめておくのはもったいないと思い、ブログを作り情報をお届けしようと考え、この『どうぶつの気持ち』を作りました。

 

 

 
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