前のコラム、猫の免疫力と健康の関係NO.1 で『免疫力』『免疫力が下がる要因』などを解説しました。
今回は、どんな事に気をつけたら免疫力が上がるのかについてスポットをあて、猫の免疫力を高める方法を解説していきたいと思います。
記事監修
獣医師 西村 美知子 ブルーミントン動物病院院長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業後、東京都武蔵野市吉祥寺で開業、2009年に現在の 東京の西荻窪に移転。 自然療法中心の病院です。検査から治療まで、精神的にも身体的にもストレスをできるだけかけずに動物さん個々が本来持つ「治癒力」が動き出すよう、様々な 自然療法をご提供しています。
目次
猫の免疫力と健康の関係性NO.2
猫の免疫力を上げるためには、『十分な運動』、『ストレスを減らす生活』、『肉食動物に合わせた食事』、『免疫調整サプリメントの摂取』が有効だと考えられます。
愛猫の生活環境などを思い出して、上に記した部分を補って健康を保ってあげて下さいね。
それでは、それぞれ詳しくみていきたいと思います。
猫の免疫を高める7つのポイント
ポイント1 運動
猫は犬と比較して、高いところに登ったり、そうかと思えばひらりと高い所から着地したり、非常に優れた運動能力を持っていますよね。
基礎的な医学研究では、適切な運動が免疫力を高めることが知られています。
そのため、運動不足になりがちな猫では、適切な運動をさせることで、免疫力を高めることができます。
しかし室内飼育だと十分な運動を確保できなことが多く、慢性的な運動不足になりがちです。
実際に高齢猫の多くが関節に問題を抱えていて、肥満はもちろん、運動不足による筋力の低下が影響していると考えられています。
外出が自由にできる猫なら運動不足になることはあまりないと考えられますが、とはいえ、外に出すのは危険です。
キャットタワーやキャットウォークなど、室内で運動できる設備を整えてあげたり、ごはんを置く場所を床ではなく、ジャンプしてあがる高さにするなど、お気に入りの場所を高い場所に誘導してみたりするだけで、運動量を増やすことができます。
またおもちゃで遊んであげるのもよいでしょう。
ポイント2 ストレスを減らす生活
人間と同じ様に、猫もストレスを感じることがあります。
精神的な不安定さは健康状態の悪化にもつながっているため、ストレスがたまると病気にかかりやすくなります。
とくに季節の変わり目などの温度変化や、家族が増えて構ってもらえなくなったなどの環境の変化に猫は敏感に反応します。
また、猫は単独行動を好む動物ということを踏まえて生活空間を作ってあげることです。
多頭飼育の猫だけでなく、一頭で飼育されている猫でも、いつでも一人でのんびり過ごせる空間を準備する、隠れられる場所を作る、家の中は自由に移動できるようにするといった感じです。
ただし、家の構造の問題もありますので、全て猫の都合に合わせる、というのは現実的には難しいかもしれません。
ストレスがたまりすぎてしまわないように、普段から、大きな環境の変化があった後には特に、様子を気にかけてあげましょう。
ポイント3 快適に休める場所作り
猫には、眠って休息するための、清潔で静かで人目につかない場所が必要です。
そして、それが、冬には暖かくて、夏には涼しい場所なら最高です。
ひとりになれる快適な場所を1~2カ所与えてあげるといいでしょう。
部屋のすみや椅子の上に清潔な毛布などタオルを畳んで置いただけでも、心地の良いベッドになります。
ポイント4 グルーミング(毛づくろい)
グルーミングには、猫の被毛や皮膚に付着したほこりなどの汚れを取り除き、皮膚の炎症やノミの寄生を防ぐ役割があります。
本来は猫自身が自分の舌と足と歯でグルーミングするのですが、現代では長毛や巻毛の猫も多く、それだけでは対処しきれなくなっています。
また、被毛に付いた汚れには多種多様な有害で健康に悪い物質が含まれており、猫が自分でなめて飲み込んでしまうよりも飼い主さんがケアしてあげたほうが健康に良いのは確かです。
定期的にブラシやくしでグルーミングをして体を清潔に保ってあげましょう。
ポイント5 定期的なワクチン接種
定期的なワクチンの接種は感染症を予防してくれるだけでなく、再発しがちな猫風邪も、ワクチンで抗体をつくることで重症化しにくくなります。
猫の感染症は多くの場合、ウイルスを持った猫の唾液や血液、排泄物に触れることで感染しますが、実は、お家の中で飼っている猫にも感染症リスクはあります。
猫の感染症リスク
★室内での感染ルート
・空気感染
ウイルスを含んだ唾液や排泄物が乾燥し、それが風に乗って室内に入り込むことがあります。
特に近所に野良猫が多い環境の場合は、庭先やベランダなどにウイルスを持った猫がいることもありますので、感染リスクが高くなります。
・飼い主からの感染
人間の風邪が猫にうつることはありませんが、たとえば飼い主さんの靴や服がウイルスを含んだ唾液や排泄物に触れる、野良猫をなでる、などによってウイルスを室内に運び入れてしまうことがあります。
・母子感染
母猫がウイルス感染していた場合、母乳から感染することがあります。
子猫は、生まれて初めて飲む「初乳」から様々な免疫力をもらいますが、母猫が何らかのウイルスを持っている場合は注意が必要です。
一度かかるとウイルスキャリアとなり、重症の場合は死の原因となることもある、恐ろしい感染症。ワクチン接種によって予防が出来る感染症の種類について見てみましょう。
ワクチン接種によって予防が可能な感染症
①猫ウイルス性鼻気管炎
②猫カリシウイルス感染症
③猫クラミジア感染症
④猫汎白血球減少症(猫ジンステンパー、猫パルボ)
⑤猫白血病ウイルス感染症
⑥猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)
ワクチンは高価なものですが、感染して治療が必要になったとしたら、その何倍も費用がかかってしまいます。
ワクチン代を惜しんだために、より高額な治療費が必要になってしまった、ということのないように、予防できる病気はしっかりと対策を取ることが重要ですね。
すべての病気がワクチンで予防できるわけではありませんが、ワクチン接種は感染症予防に大きな効力を発揮することは確かです。
大切な愛猫の健康を守るために、感染症の危険性やワクチン接種の必要性について、改めて考えてみましょう。
ワクチンの接種に関してはかかりつけの獣医に相談してみると良いですよ。
ポイント6 良質な食事
猫の重要なエネルギー源となっている動物性のタンパク質や、腸内環境を整える働きがある食物繊維の摂取などにより、からだにパワーをつけて免疫細胞を増やすことも重要です。
猫は元々肉食動物なので、それに合わせた食事を与えてあげることが大事です。
肉食動物に合わせた食事というのは、できるだけ動物性タンパク質が豊富なキャットフードを使用するということになります。
ただし、単純に動物性タンパク質が多ければ良いということではなく、やはり原材料の品質が良いこと、不要な添加物を使用していないこと、栄養バランスが整っている総合栄養食であることなどは最低限クリアしたものを使ってあげたいところです。
ところが、多くの飼い主さんは、猫がよく食べるかどうかで品質を判断しようとします。
あなたもそのような判断基準でキャットフードを選んではいませんか?
猫たちは品質が悪くても味のいいキャットフードを選んでしまいます。
そのため、信頼のできるメーカーで作られていたり、獣医さんが勧めていたりするものを選ぶ方が安心でしょう。
猫の健康に基づいて開発された栄養のあるフードを与えることは、免疫力の増加につながります。
また、食事だけでは足りない栄養分を補い免疫力を保ってくれる、サプリメントを与えるのも効果的でしょう。
ポイント7 免疫を上げるサプリメント
近年、猫の免疫力を高めるためのサプリメントが様々販売されています。
しかし、まだまだ法律の整備などは不十分で、中には低品質なものも多く存在しています。
その中には基礎研究で、免疫細胞を活性化したり、免疫細胞のバランスを整える、あるいはウイルスや細菌感染を抑制するといった報告があるものもあります。
そういったサプリメントを取り入れることで、日常的に免疫力を高め病気を未然に防ぐことも期待されます。
実際に免疫細胞のバランスを整える、病気に侵されていない細胞を元気にする*POC療法という新しい代替療法に使われているサプリメントがあります。(免疫細胞なども通常細胞の一種)
現在、東京大学医学部で研究されているサプリメントです。
ちなみに、癌細胞に対する抗癌効果に関する論文も発表され、欧米の医療ジャーナルに掲載されています。
欧米の医療ジャーナルに発表された論文の日本語翻訳版(PDF)
その免疫細胞のバランスを整えてくれるサプリメントはこちらの動物病院で購入できるようです。
愛猫に健康になってもらいたいと思い、免疫力を高めるサプリメントを選んでも、それが低品質(粗悪な材料や添加物、主な材料が少ししか入っていないなど)だと、かえって猫の健康を害すことになりますよね。
与えるサプリメントが粗悪なもので無いのかを見極めて、基礎研究や研究実績があるもの、さらに学術誌に掲載されるような論文発表がされており、エビデンスがしっかりしたものを飲ませてあげることが大事ですね。
まとめ
このように、猫の免疫は、健康生活を送る上で非常に重要なものです。
仔猫や高齢の猫については、年齢には勝てませんので、その子にあった無理のない範囲で運動やお休みをとらせてあげてください。
食事やサプリメント、予防接種などは飼い主さんがキチンと管理をしてあげれば、愛猫の免疫力は保つことができます。
ぜひ日頃から、スキンシップをしてあげたり、猫の行動はいつもと変わりはないか観察してあげてください。
そして、免疫力アップを心がけた生活をさせてあげてくださいね。
この記事へのコメントはありません。